Made in Japanのものづくり
今回のものづくりのうらがわでは、
私たちのくらしにも馴染み深い
ボタンをクローズアップ。
奈良県の橿原市に工房を置く
「信夫貝釦製作所」を訪ね、
素朴で温かみのある
貝釦にまつわるお話をお届けします。
4Nov
信夫貝釦製作所
(奈良県)
奈良県で半世紀にわたり
貝釦づくりをされてきた製作所の
二代目 信夫康秀さんご夫婦が
自然素材を手間ひまかけてつくる
手作りの良さを伝えようと立ち上げられたブランド
海や湖で育った貴重な天然資源の貝を
一枚一枚丁寧に手作業で加工し
長く愛着を持ってお使いいただける
魅力的で素敵な商品を作ることを
大切にされています。
貝釦の産地と背景
貝釦と聞くと
海が近いところで作られていると
想像される方も多いのではないでしょうか。
実は、国内の貝釦のほとんどは
奈良県で作られています。
ヨーロッパ発祥の貝釦の加工技術が
日本に伝わったのは明治時代。
兵庫県の神戸市に伝わり、そこから
大阪・奈良へと広がりました。
昭和に最盛期を迎えた貝釦産業ですが、
時代の移り変わりとともに
安価な樹脂ボタンが主流になり、
国内一位の生産量を誇る奈良県も
今では限られた工房のみでしか作られていません。
信夫貝釦製作所は貝釦製造を始められた当初は
工程によって加工する場所が異なる
分業制でボタン作りをされていました。
二代目 信夫康秀さんの
”すべての工程を一からやってみたい”
という想いから
現在は全ての工程を一貫して行われています。
貝釦の魅力とは?
自然の中で生まれ育つ貝は、
一つとして同じ形や厚み・模様のものはありません。
貝釦の元になる貝は、黒蝶貝や池蝶貝、
アコヤ貝などそれぞれに特徴がありますが
どの貝もひとつの貝から加工しても、
模様の出方や色合いが全く異なり、
すべてが”一点もの”
こちらはどちらも黒蝶貝から作られたボタン。
同じ貝からニュアンスのある
黒ボタンと真っ白な美しい白ボタンが
生まれることに驚きます。
刳りぬく場所や加工によって変化がでます。
貝釦は自然の素材を加工するため
機械で一気に大量に作ることはできません。
そのため、職人の手で時間をかけて
一個一個刳りぬき、磨きをかけ、
何度も同じ工程を繰り返しながら作られます。
そうやってひとの手が加わって
作られたボタンには温かみが宿ります。
しっくりと手に馴染み、
上品で美しい光沢を放つ貝釦は、
装いに取り入れると身近に
「自然」を感じていただけます。
そして、
なんだかちょっと楽しく、
ちょっと嬉しい気持ちに。
貝釦は素朴で控えめな存在ですが、
ひとつひとつ違う表情をもつ
個性と魅力が詰まっています。
次は、知ってしまうと貝釦が愛おしくなる
ボタンづくりの工程のうらがわをご紹介します。
小さなちいさな貝釦に目を向けてみると
天然素材から生み出されるからこその
たくさんの時間をかけた
丁寧な手しごとが詰まっていました。
貝釦ができるまで
貝の選別・刳りぬき
まずは、作るボタンのイメージに合わせて
模様を思い描きながら貝を選別し、
一個一個専用の機械で繰り抜いていきます
作るボタンの模様を思い浮かべながら、
ダイヤモンドの粉末をつけた刳りぬきの型と
特殊なキリを使って
貝が割れないように慎重に繰り抜きます。
刳りぬかれたボタンの元となる生地は
ブランクと呼ばれています。
貝の殻がついたままの状態はなんだか
オセロのような姿をしています。
こちらは丁寧に刳りぬかれた後の貝殻。
綺麗にまあるい穴が開いた貝殻は
アート作品のようにも見えます。
厚みの選別・摺り
刳りぬかれたボタン生地(ブランク)は、
傾斜をつけて回るロールの上に流し
厚さごとに選別していきます。
こちらは、選別された後のブランク
右と左で貝の厚みに差があります。
厚さごとに選別されたら、
今度はブランクの表面の凹凸を
砥石の機械を使って平らに整えます。
化車かけ(がしゃかけ)
薪の木で作られた樽の中に、
水と磨き砂をいれて2時間ほど回転させて、
角に丸みをつけていく工程。
化車かけが終わるともう一度
厚みの選別を行いより細かく厚みを分別します。
ボタンの型付け・穴あけ
ここまで来たら、
ようやくボタンの表面に溝を掘ったり、
まるい膨らみをつけたりと
仕上がりのデザインに合わせて
金型を選んで彫っていきます。
菱形やお花のモチーフなど複雑な形を作るときは
小さなグラインダーを使って
フリーハンドで成形されています。
型付けが終わると、
一個一個欠けたりヒビが入っていないかを
手作業で確認を行い、
次は穴あけの工程へ。
2つ穴や3つ穴・4つ穴など
デザインに合わせて筒状の針を
指先の間隔で位置を細かに調整しながら
穴をあけていきます。
穴あけを終えると私たちがいつも目にする
ボタンの形に近づきました。
そして、もう一度穴あけや型付けでついた
突起やキズを取り除くために
化車かけの工程を繰り返します。
艶だし
テッポウという薪製の木桶に熱湯とボタンを入れて
塩酸を混ぜた水溶液を垂らしながら
ゆっくりと擦るように艶を出していきます。
貝ボタンの量や、水溶液とのバランスなど
長年培われてきた絶妙な匙加減で
光沢が変わってきます。
艶だし
アモール掛け
艶出し後に、脱水・乾燥を終えると
アモールという油を沁み込ませた
細かな竹のチップと一緒にボタンを
太鼓型の薪の木の桶で
7時間~8時間ほど回転させて
さらに光沢を出していきます。
細かい竹のチップとボタンを
ボタンのサイズごとに異なるふるいに
順番にかけて分けていきます。
取り出されたボタンは艶やかな光を放っています。
季節や気温・湿度によって
ボタンの光沢は変わってしまうため、
長年培われてきた職人ならではの
経験と技術で細かに調節することで
美しい光沢が生まれます。
籾掛け(ロウつけ)
艶出しが終わった後は、
ボタンのすべりをよくするロウつけの工程。
蝋を擦り込んだ籾と一緒に
再度、太鼓型の薪の木の桶に入れて
回転させて仕上げていきます。
選別・個数分け
さいごにボタン一個一個を
不良品がないかどうか確かめ、
選別されたボタンを
マースと呼ばれる碁盤の目のような
天板にのせて貝釦の数を図ります。
ボタンのサイズによって、
数を図るマースのマス目の数は
100個・200個・300個と異なります。
通常はボタンの注文数にあわせて
まとめて出荷されるのですが、
4Novのボタンにはまだ続きがあります。
4Novの貝釦は台紙に、奥様の悦子さんが
一個一個ボタンの色味をあわせながら
手作業で縫い留めています。
何色の糸を使うか・どんな風に縫い留めるかを
悩みながらいつも考えられているんだそう。
手間暇かけて作られた貝釦に
遊び心が加わり、見ているだけでも
楽しい気持ちになる4Novのボタン。
ぜひ手に取って、触って、身に着けて
実際の光沢や貝釦の質感をお確かめください。
【 商 品 一 覧 】
4Nov
貝釦 モチーフ シリーズ
"こんな形のボタンがあったらいいな"
というお客さんの声から生まれたという
モンステラのモチーフや
丸みを帯びたシルエットが愛らしい瓢箪モチーフなど
ほかにはない形のボタンをご用意しました。
お洋服のワンポイントにぜひお楽しみください。
4Nov
貝釦 幾何柄 シリーズ
四角や六角形・菱形など
玉貝のお椀のようなゆるいカーブと
直線が組み合わさった様子が面白い貝釦。
玉貝のもつ柔らかな光沢と
模様をお楽しみいただけます。
4Nov
貝釦(小)
シャツやワンピースなどいつもの装いに
取り入れやすい11.5mmの貝釦。
アコヤ貝ならではの美しい光と模様を
お楽しみいただけます。
4Nov
貝ブローチ 丸・六角
(回転ピン)
茶蝶貝・池蝶貝の持つ魅力をたっぷりと
お楽しみいただけるブローチ。
ニットやブラウスにそっと添えるだけで
自然素材の貝の美しさ、
あたたかみを感じていただけます。
4Nov
お花の貝ブローチ
(プッシュピン)
桔梗や秋桜、ビルドリヨンなど
繊細なお花のモチーフを
一個一個、丁寧に時間をかけて
彫られたブローチ。
プッシュピンタイプなのでピンを取り外すと
ボタンとしてもお使いいただける
遊び心の効いたブローチです。
アワビ貝の美しい光沢と模様をお楽しみください。